病理検査の処理工程について
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病理検査の処理工程について

一般病院では、検体採取から診断報告までに早くて5日間、平均で1週間かかります。病理検査の各工程は図を参照して下さい。

図01

病理検査における標本作製工程

病理検査に5日間以上もの時間がかかってしまう主な原因は、検査に必要となる標本作製の工程にあります。病理検査を行うため、つまり顕微鏡で観察できるようにするためには、検体を薄く切る必要があります。ところが、組織片は柔らかく弾力があり(硬組織の場合は固く、刃が通らないため)、薄く切ることができません。そこで、薄く切ることができるように、検体をパラフィンで固める必要があります。また、細胞を観察するためには、観察しやすいように色を付ける(染色)時間も必要になります。
標本は以下のような手順で作られます。

図02

各工程の詳細について

【 切り出し 】
組織サイズの大きい手術検体(摘出組織)などの場合は、標本作製処理に用いる薬液が組織内に浸透しやすいように、必要な部分を選んで一定の大きさ・厚さに切り出します。臨床からの依頼用紙を参考にしながら、各臓器の取り扱い規約に準じて切り出し図を作製し、適切な部位を選択して切り出します。

【 固定 】
体から切り取った組織や細胞をそのまま放置すると死んでしまい、細胞の形や構造が変化してしまいます。そこで、体の中にあった時の細胞構造に近い状態に保つために、タンパク質を変性または凝固させて安定化させ、細胞内外の物質の移動や拡散を防ぎます。一般的には10〜20%の中性緩衝ホルマリン液が広く用いられていますが、目的によってアルコールや酸を含む固定液が使用されることもあります。

【 脱灰 】
骨や組織内の石灰沈着部などの固い部分は、そのままの状態では顕微鏡で観察できる厚さに切り出すことができません。そこで、固くなる要素である石灰分を溶かし、柔らかくします。一般的には酸やEDTAが広く用いられています。酸は脱灰時間が短く、EDTAは染色性に優れています。

【 脱水(脱脂) 】
最終的にパラフィンで包埋して薄切標本にしますが、このパラフィンは水には溶けません。そこで、アルコールにより、組織片に含まれる水分を取り除く必要があります。また、細胞内の脂肪に包まれた水分を除去するために、脂肪分も同時に取り除きます。(ただし、脂肪分の多い組織では脱水前にあらかじめ脱脂しておく必要があります)。一般的にはアルコール類が広く用いられていますが、脱脂力の強さから、クロロホルムやアセトン、キシレンとエタノールを1対1で混合した薬液なども利用されています。

【 脱アルコール 】
脱水工程で使用したアルコールはパラフィンに溶けません。そこで、パラフィンとアルコールに溶けやすい薬液を使って細胞内に染みこんでいるアルコールを除去し、パラフィンがなじむようにします。一般的にはキシレンやクロロホルムなどの有機溶剤が広く用いられていますが、薬液に毒性が指摘されているため、害のない、または少ない代替品も利用されています。なお、この工程で使用する薬液は脱アルコール剤、中間剤、仲介剤、媒介剤などの名称で呼ばれることもあります。

【 パラフィン浸透 】
組織に染みこんでいる脱アルコール剤を除去し、パラフィンを十分に浸透させます。

【 パラフィン包埋 】
組織をパラフィンで固め、組織を切り出しやすくします。

【 薄切 】
細胞が重ならず組織構造が簡単に観察できる厚さ(通常2〜5μm程度)に検体を切り取ります。

【 伸展 】
薄く切り出した検体を広げてスライドガラス上に密着させます。

【 染色 】
細胞の状態を観察しやすいように目的に応じて様々な染色法を用いて組織の各成分を染め分けます。

【 封入 】
染色された組織切片を封入剤とカバーグラスで被覆し、永久保存可能な状態にします。

図03

内視鏡検査などで採取した小さな生検材料でも、通常、標本ができるまでに約6時間かかります。

術検体など大きな検体や、脂肪が多い組織では、検体切り出し前の固定に1晩以上、脱脂に数時間〜数日必要になります。また、骨など硬組織の場合は脱灰に半日〜1週間が別に必要になりますので、標本作製にさらに時間が必要になります。